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呼気中水素ガス測定法とは8. 小腸通過時間(Oro-Cecal Transit Time)
これは「口から盲腸への通過時間」mouth-to-cecumとも呼ばれています。前節にて、糖の吸収不良の結果、どのようにして呼気中水素が産生されるかについて述べたので参照して下さい。
lactulose分解酵素が小腸に無いと、lactuloseは結腸に達するため、腸内細菌が水素を産生します。 この検査は、少量の lactulose摂取後、呼気中へ水素が現れる時間を基にしています。 通常、lactuloseを10g摂取し、呼気水素を(ラクツロース服用の30分後に始まり)15分ごとに6時間まで、もしくは、呼気中水素の上昇がみられるまで測定します。 肺胞気中の水素濃度がはじめて上昇してくる時間をOCTTとします。OCTT基準値は60〜120分です。
lactuloseは、水分を保持して腸運動を亢進するため、OCTTを短縮する事が知られています。 計測されたOCTTは検査に使用された lactuloseの服用量に影響を受けるため、少量(10gが標準)を用いることが重要です。 また、さらに重要なのは基準値により患者を比較するために同じ服用量を使用することです。
lactuloseを用いてOCTTを計測するときは水素非産生者が存在することを認識しておく必要があります。 実際、lactuloseを用いる検査により糖吸収不良検査の偽陰性結果の検証が行われます。 lactulose摂取後、水素を産生しない場合、水素非産生者としてメタンのチェックが必要です。
水素非産生者において、OCTTの測定時に水素に加えてメタンを測定するべきであると示す論文は報告されていませんが、これは代替法のようであり、この方法の実現可能性を証明するべきです。 この方法で、呼気中水素でうまく測定できなかった患者の数は減ることになります。 さらにいえば、Coaracらは lactuloseを用いた呼気中水素検査で測定した小腸通過時間はメタン産生者とメタン非産生者では異なる、と報告しています。 この報告の意味するところははっきりしませんが、水素がメタンに転換するときのゆっくりした水素の蓄積によると考えられます。
小腸通過時間を測定するのに用いられるlactuloseにかわって、安価なsorbitolが用いられるようになりました。Wurschら(Eur.J.Clin.Nutr. 1989;43:819-25)は、小腸通過時間を測定したところ、ソルビトールをラクツロースに代替しても代わらないことを証明しています。
・小腸通過時間のプロトコール
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